Type of Project : Bakery cafe
Location : Morishita,Tokyo
Area : 110.51 Sqm
Construction : Double Box
Photo : Tsuyoshi Kojima
chigaya morishita
「あるとき、徹夜で商品をつくっていたら、意識が遠のいて、不思議な夢を見たことがありました。私はどこか外国にいる太ったおばさんで、ドーナツをつくって、お客さんに手渡している。となりには、夫らしきおじさんがいて、一緒にお店を切り盛りしている。これは私の前世に違いない(笑)。ですから、ドーナツ屋さんこそが、私の天職だと信じているんです」
_鎌倉から、ものがたり。
辻堂、蔵前、日本橋に続き江東区森下にオープンした、chigaya bakeryの4店舗目となるベーカリーカフェである。
昭和46年(1971)2月末に上棟した3階建木造建築を改修した内外装は、それは以前からそこで営んでいたかのように既に自然体である。
道路に面した1階は、大きなガラスの引戸からいっぱいに外光を取り入れ、朝から柔らかく光が満ちてゆく。
5mの古材に豊かに並んだパンからしっとりとした香ばしいかおりが広がり、レコードから流れる軽快で質の良い音楽が流れている。
フランスの長椅子に腰を掛け外を眺めると、お散歩カートに乗る園児らが、店前をゆるゆる進み、ゆらゆらした古い鏡に映り込む。
階段を上がると、塗金がのぞく傾いた大棚に並ぶ本を手に取り、ベントウッドチェアに腰を掛ける。
2階には窓際のカウンター席、長いフランスのテーブル席、しっとりと大きなテーブル席、小さなテーブル席がゆるく散らばり、思い思いの時間が流れる。
陽の光で満ちた日中の店内は、日が落ちると西日が差し込み、明暗が分かれて初めて照明の灯りを感じ入る。
壁面や卓上、床に置かれた限られた照明器具は、オブジェのように認知されていた日中とは一転して機能を担う。
店主の多様な経験と記憶が重なり、良い塩梅を保ちながら、寄り添い変化していく。